個別性への取り組み

One & Only 3

グルメット - 脳出血から右側麻痺となり1日型デイ利用中の75歳男性 –

「家族との大切な時間を守る」

⑴ 3年前に脳出血を引き起こし右側麻痺となったグルメットさん。 妻はずいぶん前に他界してしまい、息子家族に手伝いや地域密着型のデイサービスを利用しながら生活していた。 そんなグルメットさんの一番の楽しみは、近くに住んでいる息子家族との旅行へいくこと。 雑誌やテレビを見ながら「今度はここへ行こう!」と 月に1回は遠出をすることや美味しい料理を食べにいくことを何よりも楽しみにしていた。

 そんなグルメットさんだが、ある日、息子家族が食事に誘っても「今日は体がだるい。ゆっくり休むわ」 と元気のない返事が返ってきた。 すぐに体温を測ってみると38.5℃まで発熱しており、息子の車でそのまま病院へ向かったところ誤嚥性肺炎であることがわかった。 病院での早期治療により無事退院となったが、 今回の入院をきっかけに「これからも息子達と旅行や食事を続けていけるのか」と不安になってしまった。 そこで、誤嚥性肺炎の予防を目的として訪問看護を導入することとなった。

⑵ 訪問初日は脳出血による身体状況を確認するため、理学療法士と一緒に伺った。 体幹が曲がっていることで身体機能の低下や食事の様子から誤嚥しやすい姿勢であったため、 テーブルや椅子のアドバイスや自分で行える肩周りの体操などを伝えた。 また、看護師も弁当を持参して2人で食事する時間を作ることで、食前に嚥下体操を一緒に行い、 食べている様子も確認することができた。しかし、そんな中で「また旅行へ行けるのかな。 デイでもトロミの付いた食事だし、美味しいものを食べる機会も減るのかな」とこれからの生活にまだ不安がある様子だった。

⑶ そこで、グルメットさんのデイサービスでの昼食の様子も確認するために看護師が赴いた。 「そんなに俺と一緒にごはん食べたいか」とグルメットさんは笑顔で迎えてくれた。 グルメットさんの食事の様子を見ながら、介護士の方へ訪問看護で行っている嚥下体操や食事中の注意点などを伝えた。 「あれからデイでもちゃんと嚥下体操できてますよ」とグルメットさんは頑張っている様子だった。 その後もノートや電話でやりとりを交わし、トロミなしの食事ができるようになった。

⑷ グルメットさんは自主練習もマスターし、今後もデイサービスや自宅で継続することを約束に訪問看護を卒業することになった。 最後の日は息子家族も家に集まり、いつも以上のご馳走を準備されていた。グルメットさんも相変わらず、 食材を覗き込んではその豆知識を話してくれた。 家族に囲まれながら楽しそうに話している様子を見て「グルメットさんにとって、幸せな瞬間はこれだ」とあらためて実感した。 最後には、「いままで本当にありがとう。今度、息子達と旅行へいくんだ」とグルメットさんは嬉しそうに語ってくれた。