個別性への取り組み

One & Only 6

アプソル - 転倒による大腿骨骨折から歩行困難になった75歳女性 –

「安心できる日常をつくる」

⑴ 息子さん夫婦と3人で暮らしているアプソルさんは、買い物や掃除など家のことを率先して行い、 夫婦が少しでも楽に生活できるように努力していた。いつものように2階で洗濯物を干し終わり、 食事の準備のために1階に降りようとしたところ、階段を踏み外してしまった。 その後、救急車で運ばれて左大腿骨頸部骨折の診断で入院となった。

 手術は無事に終え、リハビリや治療に対して積極的であり、 「帰ってからまた力になりたいで、よぼよぼの婆さんにならんようにがんばるでね」と息子さん夫婦に話されていた。 病院でのリハビリを通して着替えや歩行器を使って歩くことはできるようになった。

⑵ 退院して生活を始めると、家の中の小さな段差を越えるときやトイレの出入りなどでは思うように歩行器が使えなかった。 また、タンスから服を出し入れするときや仏壇にお供え物をするときにもバランスが取れず、危なかっしい様子であった。 そのため何度かお嫁さんが「代わりにやろうか?」と提案したが、 「先立ったあの人に頭が上がらんし、私がやらんと1日が始まらんのよね」 とアプソルさんは哀らしくつぶやいたため、返す言葉がなかった。 それでもお嫁さんの気持ちとしては、いまの状態で家のことをしてもらうのは不安だったため、 家族で話し合った末、訪問リハビリを行うこととなった。

⑶ 家でのリハビリは本人の生活を一つ一つ再現してもらい、練習をして安全にできることとできないことに分けた。 中でも仏壇に手を合わせることを大切にされていたため、仏壇用の小さな椅子をすぐに用意した。 一緒に手を合わせると「これでお父さんも喜んでくれるかな」と笑ってみえた。 その後もできない動作は家族と話し合いながら収納の配置を変えたり、環境を整えたりと一緒に解決策を見つけていった。


⑷ アプソルさんの様子を息子さんが見て「お袋の動きが骨折する前の状態に戻ってきたよな」と話されていた。 お嫁さんは仏壇に手を合わせる姿勢が整ってきたことにも驚かれていた。 「最近のお義母さん生き活きしてきたね。私も安心して仕事に集中できるようになってきた」などといった言葉が聞かれた。 息子さん夫婦は退院してから家のことをある程度アプソルさんに任せていたが、どこか不安に感じていた。 でも今のアプソルさんを見てそんな思いは無くなっていた。

⑸ ある日スタッフがご飯を食べにお店へ行くと、アプソルさんが息子さん夫婦とテーブルを囲んでいた。 息子さんがスタッフに気づき「おー!みなともさんここ来るの?」と明るく話しかけてくれた。 アプソルさんも「また会えるなんてうれしいわ。たまにはこうやって外で食べるのもいいね」 と元気に家族と過ごしている姿をみることができた。