個別性への取り組み

One & Only 9 肺気腫を患いながらも夫婦で喫茶店を営む69歳女性

カフィ - 肺気腫を患いながらも夫婦で喫茶店を営む69歳女性 –

「喫茶店の再開を目指して」

⑴ カフィさんは肺気腫を患っていたが、根治療法がなかったため症状をコントロールし暮らしていた。 たとえ症状が悪化しても入院すれば治り、退院したら今までどおりの生活ができていたため、家族で経営していた喫茶店の仕事も問題なかった。 喫茶店ではカフィさんが料理を作り、時間があるときはお客さんと他愛のない話をして盛り上がっていた。 旦那さんも仕事に関わっていたが病気を患っていたため、できる仕事を可能な範囲で行っていた。 だが、ある日旦那さんは容態が悪くなったため入院してしまった。カフィさんはその後も一人で家と仕事のことをやっていた。 そんなある日、突然旦那さんが息を引き取ったと連絡を受けた。 その知らせを聞いて精神的にショックを受け、呼吸困難になってしまい、救急車で運ばれ入院となった。

⑵ 入院したばかりの頃は孤独感から呼吸困難に陥ることがあり、たびたび吸入器を使用していた。 そんな中でも喫茶店のお客さんが病室によく顔を出してくれていたため、少しずつ気持ちが穏やかになった。 それとともに症状も次第に安定していった。 その後退院が決まったが、一人で暮らしていくことに孤独や不安を感じることがあったため、リハビリだけではなく訪問看護も導入することになった。

⑶ 自宅に帰ってきても、食欲が湧かず、がんばって食べようとしても十分に食事が摂れなかった。 旦那さんの逝去が重なったこともあり、カフィさんは身長が155cmの割に体重が30kgもなかった。 そのため何をするにもすぐに息が上がってしまい、家のことはほとんどできなかった。 だが、近所の方が「カフィちゃん、私でよければご飯作ったりして手伝ってあげようか? 去年、私の旦那が亡くなったとき、カフィちゃんの作ってくれたごはんで元気づけられたんだよ。だから、今度は私の番だから」と励ましてくれていた。 そのときのことをカフィさんは涙ぐみながら話された。 入院中から周りの人たちの励みに答えようと元気に振舞っていたカフィさんだが、この時ばかりは看護師の前で素直な心の内を見せてくれた。

⑷ リハビリのときは「しっかり運動して少しでも家のことをやれるようにならなきゃ」と前向きで、 正しい呼吸方法を実践しつつ体力や筋力を付ける運動を行った。 ただ、体力の少なさから一度の食事で食べられる量は少なく、すぐに満腹感が現れる状態には変わらなかった。 そこで看護師と一緒に食べやすい間食や栄養補助食品などを探した。 ほかにも呼吸状態を見ながら、安心して浴槽に浸かれるよう入浴を手伝ったり、 カフィさんがやりたい家事を一緒に取り組んだりして、カフィさんができることを中心に行った。

⑸ 2年ほど経ったころ、「なかなかすっと体が動くようにはならないけど、食器洗いや野菜を切るくらいはできるようになって良かった」と話してくれた。 食べられる量は少しずつ増え、食事を楽しむ余裕も出てきていた。
 たまに作ったクッキーを「コーヒーのお供に出してたやつなの」と笑顔でスタッフに渡してくれた。 ほかにもポテトサラダを作って近所の方から「懐かしい!腕落ちてないわね!」と声をかけられたようで、 今後ランチの時間帯だけでも営業を再開することを目標にしている。